夢から出られない夢
目が覚めると自分の布団の上で寝てた。
目が覚めると言っても、意識があるだけであまりの眠気からか目が開かない。これはよくあるから、頑張って目開けなきゃーって思ってると、玄関の向こうで人の声がして、鍵がガチャリと開く音で緊張が走る。一人暮らしの俺の家で誰にも合鍵なんて渡してないし、チェーンロックもしてるのに…人が入ってくるはずがないのに。
複数人がガヤガヤとうちに入ってくる音が聞こえる。若い男女の声が聞こえる。
なかなか目が開かない。感覚としては金縛りに近いものがあり、これは恐怖心から身体が動かなくなってるのか、金縛りで動かないのかわからないけど、とにかく目が開かない。目の前で人がどんどん入っていく気配を感じつつ、何か大きなカバンのようなものを、ドサッ!と置かれるような音や感覚を感じる。
必死になってようやく目が覚めて開いた時、たくさんの高校生がいた。まるでうちが教室であるかのように、当然のように。ある男子生徒は俺の机に座り、ある女子生徒らはまるで俺がいないかのように2人でベッドの上で足を伸ばして座り楽しそうに話している。
慌てて起き上がり、入ってくるな!と叫ぶ。誰の耳にも届いていないようだ。ベランダ近くに座るおかっぱあたまの女性に先生は誰だと聞くと、「私ですが?」と言われる。なぜ私の家にいるんだと聞くと「事前に予約してませんでしたっけ?」と言われる。その間ずっと誰とも目は合わない。
改めて家の中を見渡すと知らない部屋が2つ存在した。マットなブルーな床と壁紙の空間。「こんな部屋は俺の家には存在しない。」と言うことに気がつき、「あ、よかった!これ夢だわ!」と口に出して言った。夢だから早く覚めて欲しいという思いからわざわざ口に出して言ってみた。それからしばらく経ってから瞼が重たくなり、再び眠るように目を閉じた。身体から中身が抜けるような感覚。
ふと意識が戻ると自分の布団の中にいた。
良かった、夢から覚めたか。気持ち悪かったなぁ、と思い布団から出ると自分の家のようだが全然知らないキッチン。「何これ、また違う」
前回のおさらいのごとく、他にも家の違う箇所を探す。キッチンは違うがもっと違う箇所はないかな、と思い少し見渡しながら歩くと、廊下に兄がうずくまっている。まるで猫のようにうずくまっていて、「何してんの?」と聞いた瞬間、飛び上がって俺の方に白いペンのようなものを勢いよく投げてきた。それはまるで槍投げの投擲のように、真っ直ぐ、ジャイロを描いて俺めがけて飛んでくる。「うわっ!」と両目を前に出して防ぐようにし、身体をかがめる。
「これは夢なんだから早く覚めてよ!」と強く願うと、またまぶたが重たくなり、身体から中身が抜けるような脱力感。気がつけば布団の中で目が覚めた。
2度も経験すると流石に警戒してしまう。
これは夢?現実?
しかし今回はしっかりと日の光や身体の感覚を感じる。すかさずスマホを開きYouTubeを再生する。ちゃんと再生できることに安心感を感じ、「これは現実だ。」と安堵した。
ここは現実だと安堵したのだ。
僕は本当の現実を生きているのだろうか。